何故、この活動を始めようと思ったのか
- 晴香 村上
- 10月31日
- 読了時間: 4分
舞台というものは、照明や音楽、セリフや演技、どれを取っても“人の想い”でできています。観客の拍手も、袖で見守るスタッフの息遣いも、すべてが一体となってひとつの世界を生み出す。けれど、その「想い」を形にするための環境や仕組みは、いまだに閉鎖的で、少し不親切な部分が多い。演劇は本来、もっと自由で、もっと開かれた場所であるべきだと思うのです。
私は、22歳には板の上を下り、社会人として生きてきました。
舞台は、好きでよく足を運んでいたり、仲のいい劇団さんのお手伝いをしてきました。演劇というものを支える立場の中で何度も感じてきたのは、「やりたい」と「できない」の間に広がる大きな溝です。「舞台を打ちたいけれど資金が足りない」「契約や会場の手続きが難しい」「どうやって仲間を集めたらいいかわからない」。演劇を続けたい人ほど、現実的な壁にぶつかってしまう。その“もどかしさ”を少しでも取り除けるような仕組みをつくりたい。それが、日本ステージプランナー協会を立ち上げた最初の動機でした。
「ステージプランナー」という言葉には、舞台づくりの“伴走者”という意味を込めています。ウェディングプランナーが新郎新婦の理想を形にしていくように、ステージプランナーは、演劇人の理想を一緒に実現していく存在です。どんな小さな夢でも構いません。「いつか舞台に立ってみたい」「自分の芝居を上演してみたい」「演劇を仕事にしたい」。その“はじめの一歩”を踏み出す人たちを支えられる場所でありたいと思っています。
協会では、ワークショップやオーディションを通じて、役者や制作者が出会うきっかけをつくります。現場で役立つ知識を学べる講座や、演劇を知らない人でも参加できる体験イベントなど、いわば「演劇の入り口」を広げる活動を目指しています。
そして、もうひとつ大切にしているのが、「観る人」を増やすこと。演劇は、観客がいなければ成立しません。でも、まだまだ“観劇をする文化”が一般には根付いていないのが現状です。チケット代や劇場の雰囲気、あるいは“なんとなく難しそう”という印象が、観るきっかけを遠ざけてしまっている。そこで私たちは、普段あまり舞台を観ない人たちでも気軽に足を運べる仕組みを作りたいと考えています。
たとえば、劇場の近くの飲食店とコラボして、「観劇チケットを見せたらドリンク1杯無料」といったキャンペーンを企画したり、公演期間中に劇場街を盛り上げるイベントを開催したりする。観劇の前後に“ちょっと寄り道したくなる”ような文化圏を広げていきたいのです。観客にとっては小さなきっかけでも、それが「演劇に出会う入口」になる。そんな導線を地域と一緒に作っていくことも、協会の使命のひとつだと考えています。
さらに、演劇とはまったく関係のないイベントも積極的に行っていきます。たとえば、劇団や役者、観客が一緒に参加できる“演劇運動会”や“交流フェス”。真剣勝負の芝居の現場とは違う場所で、人と人が笑い合える時間を作る。そこには、肩書きやキャリアを越えた「仲間」としてのつながりが生まれます。演劇という枠を飛び越えた活動の中からこそ、本当に自由で新しい発想が生まれると信じています。
日本ステージプランナー協会は、“人の想いを形にする”総合的なステージコミュニティであり、“舞台のある生活”を、もっと多くの人に届けるための場です。
これからは、舞台公演やワークショップだけでなく、インタビュー記事やYouTubeなどの動画コンテンツ、演劇祭やフリーマーケットのような大型企画も展開していく予定です。演劇という言葉のイメージを、もっと明るく、もっと日常に近いものにしたい。演劇は「特別な人のためのもの」ではなく、「誰にでも届くもの」であるはずです。
最終的な目標は、閉鎖的になりがちな演劇業界に、新しい風を送り込むことです。昔ながらの良さは守りながらも、時代に合った形で“関わり方”を増やしていく。観客として、制作者として、サポーターとして──人が舞台に関わる入口は、もっと多様であっていい。
「舞台を観る人」も「つくる人」も「支える人」も、みんなで一緒にこの業界を育てていく。そのために、まずは“出会い”をつくること。そして、“続けられる仕組み”を整えること。それが私たちの掲げる“ステージプランニング”の原点です。
舞台は、一人では作れません。照明が光り、音が鳴り、役者が息をして、観客が笑う。そのすべてが重なって、初めて「作品」になります。だからこそ、この協会は、ひとりひとりの“関わり”を大切にしたい。あなたが「何かやってみたい」と思った瞬間が、すでに“始まり”なのです。
「舞台をもっと身近に。舞台をもっと自由に。」この言葉を胸に、これからも活動を続けていきます。演劇という世界が、誰かにとっての“居場所”になるように。そして、そこからまた新しい風が吹くように。
日本ステージプランナー協会
代表理事 村上



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